死亡的遊戯・メモリアルナイト 

2000年12月21日(木)

 池袋の映画館HUMAXシネマズ前を通りかかると、でかく貼られたブルース・リーの看板が目に入った。おお、珍しや。
見ると、待ちに待ったあの「死亡的遊戯」(原題のまま)が来春に上映されるというではないか! 前に雑誌で制作中という記事を読んだので楽しみにはしていたのだが、それから随分と月日が経ち、いつしか忘れてしまっていた。78年に上映された旧作の「死亡遊戯」では、撮影中にブルース・リーが急死した関係で、本人が登場するのは最後のアクションシーンのみ。しかもほんの12〜3分だった。他のシーンはソックリさんが演じていたり、違う映画から顔のアップをつないで編集してあるだけだ。それから約20年。長年お蔵入りしていた未公開シーンを満載した「完全版」が上映されるというのだから、観に行かぬ手はない。

 早速、卓上カレンダー付きの前売り券を購入した。しかも封切りの1月13日はオールナイトで旧作を含めた上映と、ゲストを呼んでの「メモリアルナイト」となるらしい。さて。リーのファンで、完徹決め込んで観に行く人募集(笑)!

2001年1月13日(土)〜14日(日)

 13日の夕方、友人等とせっかくの飲み会があったのだが、午後7時をもって所用により退席。所用というのは、もちろん先月書いた、「ブルースリー・メモリアルナイト」に参加するためである。
制作途中でブルース・リーが死んでしまったために、未完となったアクション映画「死亡的遊戯」。本人が死の前日まで編集作業を行なっていたという大量のフィルムが、その死後27年ぶりにようやく甦るとあっては、何としても観にいかねば。

 開場30分前の午後8時に池袋に到着、映画館HUMAXシネマズの階段には既に長蛇の列! 会場内はほぼ満席で、立ち見も出るほどであった。(全席指定で良かった…) 場内では多数のブルース・リーグッズが販売され、熱気ムンムン。フィギュアを5〜6個も買い漁るマニア、カンフー服を着てヌンチャクを振りまわす青年なども居たが、大体20〜40代のいたって普通な男女が多かった。思ったよりブルース・リーのファンが多くて安心する。こんな熱気のある映画館を体験するのは、実に久しぶりだ。

 そして、まずは「ドラゴン怒りの鉄拳」「ドラゴンへの道」などの劇場予告編、製作者(竹田氏)によるトークショーがあり、いよいよ「死亡的遊戯」の上映が始まる。映画前半は、1972年つまり「死亡的遊戯」が撮影された当時を再現するドキュメンタリー風になっていた。ブルース・リーの役はデビッド・リーという香港の若手俳優。似ていないが、まあこの映画の場合、それは大した問題ではない。そして、映画後半に入り、いよいよクライマックスの塔のシーンへ。陳元、田俊がイノサントにボコボコにされ(この映像が大スクリーンで見られるだけで感涙ものだったが)、塔の階段を駆け上がってブルース・リーが画面に映し出されると、その後は一転、場内は異様なほど張り詰めた空気に。


塔を登るのは、主人公一人だけじゃない


 みんな身じろぎもせず、ブルース・リーの一挙手一投足に注目しているのだ。なにしろ「Do you speak any English?」から始まり、旧作「死亡遊戯」の10数分間ではひとこともしゃべらなかったブルース・リーがしゃべる!不敵に微笑む! とくに台詞などは台本が残っていないため、スタッフが1年半がかりで口の動きから台詞を再現したというのだ。声もまずまず本人に近い感じが出ていた。怪鳥音も、旧作のやる気のない声ではなく、本人の声がしっかりアテられていて安心。さすがに長年ファンが待ち望んだものを映像化するだけあって、かなりのこだわりを持って作られた映画だと推察できる。延々と40分も展開されるクライマックスのアクションシーン。敵キャラの棒術使いダン・イノサント、韓国の合気道家・池漢載(チーハンサイ)、身長218センチの黒人ジャバールも、「死亡遊戯」より強さが増している。特に池漢載は陳元、田俊を面白いように投げまくるし、ブルースとも最初のうちは互角に渡り合うので、強さが3倍ぐらいになったように感じられる(笑)。


ヌンチャクの振りを失敗するブルース。表情がまたいい

 熱い40分が終わり、エンディングではNGシーンが。ヌンチャクの振りに失敗して照れ笑いを浮かべるブルース・リー。ビデオ「ブルース・リー神話」でも少しだけそのシーンは観られたが、巨大スクリーンのそれは新鮮だった。たったの40分だったが、ブルース・リーは確かに蘇った。スタッフロールが終わり、場内には自然に大きな拍手がわき起こった。ブルース・リーファンのほか、格闘技や武道に少しでも興味のある人ならば、誰でも楽しめるのではないだろうか。


 その後は、73年に上映されたドキュメンタリー映画「ブルース・リーの生と死」、旧作「死亡遊戯」、そして再度、新作「死亡的遊戯」が上映され、午後5時に閉幕。旧作「死亡遊戯」では少々ダレたが(笑)、夜明け後も熱気衰えず、あっという間の幸せな8時間であった。「死亡的遊戯」2度目のエンディングが近づき、塔を降りてゆくブルース・リーを見ながら、「このままずっと、映画が続けばいいのに…」と思った。もっともっと、ブルース・リーが動く姿を見ていたかった。(2003.2.25 加筆修正済 哲坊)

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