あらすじ
少林寺で武道の奥義を極めた主人公リー(ブルース・リー)は、かつて同じ少林寺に学びながら、今は悪の道に踏み込んだ先輩武術家・ハンの悪行を暴くため、彼の要塞島で開かれる武術トーナメントに出場する。この敵、実はリーの妹の死にも深く関わっていた。トーナメントでリーは妹の仇・オハラを倒し、ハンの麻薬製造工場を突き止めるが…。
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世界が認めたブルース・リー映画のスタンダード
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ブルース・リーが人種差別の壁を乗り越え、実力でハリウッド進出を勝ち取った作品。その理由から、香港よりもアメリカで初めて公開され、日本に入ってきたのも前3作を飛ばしてこの作品が一番最初となっている。知名度も高く、「ブルース・リーには興味ないけど、この映画は観たよ」という人も多い。後進の映画にも多大な影響を与えた代表作であり、遺作である。テーマ曲も映画から一人歩きするほど有名で、携帯の着メロやバラエティ番組などでよく耳にする。最近は、西武ライオンズの松井が打席に立つときのテーマに使用している。
それまでの香港映画3作と違い、ハリウッドのスタッフによって撮影された(撮影場所は香港)。そのため吹き替えではなく、唯一ブルース・リーの肉声を聞くことができる貴重な映画でもある。ただし、ブルースは完全な主演ではなく、ハリウッド俳優のジョン・サクソンと分け合った形になっている。今の映画でいえば、ジャッキー・チェンとクリス・タッカー共演の「ラッシュアワー」のようなもの、と考えればわかりやすい。当時のアメリカには、東洋人を1人で主役に立てるほどの懐の広さは当然無かった。これは、未だ根強く残る傾向でもある。
時代を感じさせる2人してのピースサインと、ジョン・サクソンの髪型
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映画冒頭、見る者の度肝を抜いた、オープン・フィンガーグローブでの試合
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しかし、映画を観れば誰が本当の主役かは一目瞭然である。ブルース・リーのアクションのレベルに、他の出演者たちが到底追いつけていない。ジョン・サクソンの動きには全くキレがなく、とても強そうには見えない。あの腰砕けパンチで倒されるボロ(ヤン・スエ)は、見かけ倒しの役にされてしまい、実に可哀相だった。どうせ主役を2人立てるなら、武道家ではなく策士的な設定にすれば良かったのに。
ボスのハンにしても、当時の年齢で60歳ぐらいの大ベテラン俳優。貫禄はあるが、動きが遅くてあまり強そうに見えない。本当は物凄く強いという設定なので、途中で黒人の空手家・ウイリアムズを殴り殺すシーンがあるのだが、イマイチ説得力がなかった。最後のリーとハンの対決も実力差が歴然で、鉄の爪と鏡の部屋の存在が、かろうじて見せ場をつくっている。つまり、この映画の難点は、ひとつは配役にあると思うのだ。ブルースと格闘シーンをまともに撮れる役者が、冒頭のサモ・ハン・キンポーと、ボブ・ウォールぐらいしかいなかった。この点は、ブルースが途中まで撮っていた「死亡的遊戯」と大きく異なる点であろう。
オハラ(ボブ・ウォール)戦での、伝説のサイドキック。小細工なしに本気で蹴っている!
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当時、ブルースのスタントマンの1人だったジャッキー・チェンも、終盤にやられ役として登場
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ブルースのアクションシーン自体が、それほどには多くないのも不満のひとつ。冒頭の試合から、リーの本領が発揮されるオハラ戦までが非常に長いのだ。その鬱憤を晴らすかのような、地下で雑魚たちを蹴散らす場面のリーは、まさに水を得た魚。棒術が冴えわたって実に気持ちがいい。ただ、有名なヌンチャクのシーンは、この映画では実はほんの1〜2分だけで、取ってつけたような印象を受けてしまう。
ストーリーも一見よく出来ているようだが、よくも悪くもアメリカ的というか、突っ込みどころ満載だし、視聴者は始めからリーの出演シーンを楽しみに観るようなものなので、ドラマ部分だけではさほど観賞に値しない。そもそも、監督がハリウッドでは3流といわれるロバート・クローズ。本当にブルースの魅力を理解できる監督が撮っていたのなら、もっともっと完成度の高い作品に仕上がったと思う。まあ、まさかこれが最後の映画になるとは、本人も他の誰も予想していなかったのだろうけど。
本作品のブルースは、神がかり的な存在感と、何かに憑かれたようなギラギラした表情が印象的だ。実際、ハリウッド進出の夢がかなって彼は極度に緊張し、撮影当初はうまく演技ができなかったようだ。さらに、撮影中すでに彼は脳の腫瘍が進行しており、常にイライラし、制作スタッフたちとの揉め事も絶えなかった。確かに表情をみると、自分の思い通り、伸び伸び自由に撮っていた「ドラゴンへの道」や「死亡的遊戯」の表情とはまったく違うことがわかる。
役柄上クールさを強調している部分もあるのだろうが、それまでの作品にあった素朴な表情や、素晴らしい笑顔が、この映画ではあまり観られないのが残念。実際、私は子供の頃この作品の、怖い表情のブルースが印象的すぎてジャッキーほどには好きになれなかった(もちろん、今はそれも含めて大好きなんだけど)。ブルースの魅力が100だとすると60〜70ぐらいしか伝わってこないように思うのだ。このあたりが、前述の2作品に比べて私が満点をつけられない理由なのである。
まだ、制作の段階でハリウッドはブルースを本気で世界に売り出そうとは考えていなかった。映像がある程度出来上がった段階になって、その動きの素晴らしさに見惚れ、ようやく重い腰を上げ始めるのである。実際、本作品は、ブルースを世界に売り出すプロモーション的な役割を担うはずの位置付けだったはずだが、彼の急逝で図らずも遺作となってしまった。ともあれ、ブルースは死ぬ前の一瞬の煌きを、この映画によって世界中の人々のまぶたに焼き付け、伝説となった。(2003年4月13日 哲坊)
小龍ファンが斬る! 「燃えよドラゴン」
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一郎蛙
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哲坊さん、私の「燃えよドラゴン」初体験記に「鳥肌」がたったとの事、ありがとうございます。ちなみに、私は最近この「燃えよドラゴン」をDVDで改めて見て「鳥肌がたつ」どころか「背筋が寒く」なってしまいました。
前田日明じゃないけれど「多分100回位見ている」映画ですが、ある格闘技系の解説本でリーとオハラとの試合では(例の高速撮影している「ロケット、パ〜ンチ!!」のシーン)、只でさえ速くて見えない位のパンチの前に別の技を仕掛けているという解説を呼んでスロー再生で確認したら、何と!、本当にあの俊速パンチのさらに寸前に仕掛けているではありませんか!!今まで30年近くもの間、それこそ脳に焼き付く程見て来た映像なのに、自分にはその全体像が見えていなかったなんて…。
オハラと同時に前へ出した手の甲が触れた瞬間、いきなりあの素早いパンチが決まったとばかり思っていたのは間違いで、実はパンチを出す前にもう片方の手でオハラが出している手を制しているのです(詠春拳の特長?の手首の返しを使った技で「パクサオ」でしたっけ?)。
早撃ち0.3秒の次元大介もビックリの速技です(コマ送りしても、ほんの数フレームにしか、それもかすかにしか映っていません)。2発目のパンチでも確認でき、さらに3発目の攻防でも(音響効果で)2回位オハラの攻撃をすかしてひじ打ちを決めていると思っていたのが、実際にはリーは最後のひじ打ちまでに少なくとも4〜5の技を瞬時に繰り出しているようです…。
私達が最初にブルース・リーを見て驚いたのは、もちろんオープン・フィンガー・グローブでの試合や、華麗なアクションでしたが、何といっても一番驚いたのはリーの動きの速さでした(人間がトリックを使わずに、こんなに素早い動きを出来るなんて)。でも、その速さが30年も経った今さらに速かったとは…。本当にこの瞬技を確認した時には、背中がゾッとしてしまいました。(03.4.25)
評価…★★★★★5
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李未亡人・田野 殿
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私は個人的に大好きな映画です。初めて観たブルース・リー作品が正にこれでした。「完璧な肉体、鋭い眼差し、聞いたことのない高い叫び声」。子供の私にはインパクト大でした。でもラオくんを教えている時の優しい瞳や、コブラを無線室に入れた時のとぼけた表情など、ちゃ〜んと女性の心も轢き付ける魅力を持ってるんですよね〜。
「死亡的遊戯」の撮影を中断させてまでこの映画を選ぶことになったのは「ゴールデンハーベストがショウ・ブラザーズにブルース・リーを獲られない為」の策略だったとも言われています。でもそんなの私にはどうでもいいんです!!「考えるな、感じるんだ!」という素晴らしい言葉を残してくれたのですから。でも、オハラを倒した後の表情を理解できるまで十数年かかりました(笑)。(03.4.25)
評価…★★★★★5
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哲坊
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6月22日、渋谷東急文化会館の閉館イベントで『燃えよドラゴン』を観てきた。混雑防止のためか当日券のみの販売で、先着順に整理券を貰っての入場。上映は16時半だが、昼頃窓口に行き、あらかじめチケットを買っておいた。チケットは1枚800円と手頃で、1回ごとの入れ替え制。案の定上映開始の30分前から行列ができ、館内はほぼ満席になった。
オールド世代から若夫婦、カップル、親子連れなど客層も実にさまざまで、最近の映画館の様子とはかなり雰囲気が異なっていた。私はテレビ世代(今の若者はビデオ世代、あるいはDVD世代か)なので、渋谷が映画館だらけだった頃のことはあまり知らないが、今日ばかりは、そんな当時の雰囲気をわずかながらも感じることができた。劇場の大スクリーンで観たことのあるブルース・リー映画は『G.O.D死亡的遊戯』『死亡遊戯』だけだ。『燃えよドラゴン』は、これまでに各地で度々リバイバル上映されているが、不思議と今まで足を運ばなかった自分の愚かさを呪う。
もちろんビデオでは、もう何十回も見ているし、DVDも所持しているぐらいだが、やはり劇場で観ると臨場感が全然ちがった。大きな画面と音響だからこそ細部まで視覚に飛び込んでくる。今更ながら新たな発見も沢山あった。ブルース・リーの眼光、汗、闘志、筋肉、そしてあの怪鳥音。画面から飛び出さんばかりに躍動する彼の勇姿に改めて魅了された。とくに映画中盤、宿敵・オハラに必殺のキックを見舞い、全身全霊を込めてフットスタンプを決めるシーンでは体中が総毛立ち、アドレナリンが出まくってしまった。ハンを倒し、親指を立てて去るリー。エンドロールが終わると、全館から万雷の拍手が沸き起こった。
私同様、ブルース・リー映画を劇場で初めて観る人、久々に観た人も居ただろう。公開当時の1973年は、もっともっと熱かったんだろうなあ。やっぱり凄いや、ブルース・リーは…。(03.6.22の日記より抜粋)
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ESPERANSA
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自分がブルース・リーの大ファンになったキッカケはこの映画だと思っています。 自分が一番最初に見たブルース・リーの映画でもあるし、何よりもメチャクチャ強い!!と思いました。ハッキリ言ってしまうと全ての格闘シーンが好きなのですが、強いてあげるならば「ヌンチャク」のシーンと「リーVSオハラ」のシーンでしょうか・・。 この二つのシーンは今観ていても目が釘付けになってしまいます。
まず、ヌンチャクのシーン・・自分がこの映画を最初に見たのはまだ小学生の頃でした。(現在中学3年生です)
リーがカリスティックで鎖で結ばれた2つの棒を観たとき、内心「何これ??」っていう感じでした。すると次の瞬間、リーは目にも止まらぬ凄いスピードで振り回し始めたではありませんか!!この時自分の心のなかは「凄い!!何だありゃ!!??」の感激でいっぱいだったのをまだ覚えています。今では自分と同じく大ファンの父親(この父親のおかげでブルース・リーという素晴らしい偉人に会えたのです。感謝!!)とヌンチャクを作りブルースに成りきった気分で時たま振り回しています。
次にあげた「リーVSオハラ」の戦い、ここのリーが凄いスピードで先制パンチをオハラにくれてやった時「速!!」という気持ちでいっぱいでした。 当時自分があんな速い腕の動きを見たのは初めてだったと思います。そしてつい最近のこのシーンについてさらに自分を感激のドン底に陥れる出来事が起こりました。
「ブルース・リーの真実」というドキュメントをつい最近観たのですが実はこのシーン、実際のリーの速さだと当時のカメラ技術では速すぎて映像がブレるため、わざとフィルムを遅らせて完成されたとのこと・・。 もうそのときは言葉になりませんでした。 ただでさえあんなに速いのに実際ではもっと速い動きをしていた・・。こんなにも凄いブルース・リーは残念なことに、自分が生まれる前に亡くなっています。おまけに「カンフーブーム」も過ぎたあとでした。もっと自分が古い人間だったら・・もしくはブルース・リーが今でも生きていてくれたら・・と思ってしまいます。(03.11.30)
評価…★★★★4
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SPACE−HIGH
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この映画は僕が最初に見たブルース・リー映画でした。燃えよドラゴンのテーマは、バラエティ番組とかでも良く耳にしますね。芸人さんがカンフーのポーズを取るたびに流れてきますよね。始めはサモハンとジャッキーがエキストラで出演してることには気づきませんでした。ラストの鏡の部屋での決戦はいいですね。ハンがトドメを刺されてリーが去っていき、ハンが刺さった扉が回転するシーン、見ていて目が回りそうですよね。もう一度最初から見たいなぁ。
(05.9.3)
評価…★★★★4
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デブゴン
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初めてブルース・リーに遭遇した想い出の作品。小学生がお金を払って最初に見た映画(まんがまつり等は別・・・)がこの作品だったなんて、今思うとすごいことだと思いませんか?もう何回見たことか・・・。レコードも買い、ビデオも買い、LDも買い、そしてDVDも買いました。家に何種類の「燃えよドラゴン」があることでしょう!生前のBLには会えなくても、同じ時間を共有出来たことを、神に感謝します。
(06.7.20)
評価…★★★★★5
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はるお
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この作品はハリウッド映画ということもあってか、以前の”香港三部作(?)”に較べて、確かに映画そのもののクォリティは高いと思います。でも、はっきり言って、この作品はあまり好きじゃないんですよね。
つい先日、オマケの「ウォリアーズ・ジャーニー」目当てで、日本版の”スペシャル・エディション”を遅まきながらGetしました。で、改めて観ましたが、やはり面白くない…。 すみません…。なんかハードボイルド的というかクールで重苦しい雰囲気と、リーの役柄、つまりキャラが嫌いなんですよ。アクションが出来ればのハナシですが、全盛期の松田優作がやった方が似合いそうなキャラ…タマにハリウッドが日本を舞台にした作品を作りますよね。
作品の良し悪しは別にして、観てて何かヘンでしょ? 日本の描かれ方って…最近はちょっとマシなようですけど、、、昔話で恐縮ですが、高倉健の「ザ・ヤクザ」って作品がありまして…これなんて相当違和感がありましたよ…。 私は日本人なので、香港や中国の生活文化等は分かりませんが、
外国人の目から見た香港・中国人といった感じで、何か上記の日本モノと同様の匂いが感じられるのは私だけでしょうか?実質上の最後の作品となった映画ですけど、日本初公開作品は「燃えドラ」…。初公開は見逃してしまい、約一年後のリバイバル上映で観ました。
つまり、「危機〜」から作品順を追って観たわけですが、最初に「燃えドラ」から観てしまっていたら…おそらく、「危機〜」以降は観ることなく、リーやその他の香港映画にのめり込むことは無かっただろうと思います。正直言って… これが最後の作品? って思いましたね。 小学生だったけど…。酷評ばかりしてしまったようで… すみません。しかし、リーのアクション・シーンには文句のつけようがなく、素晴らしい内容だということを付け加えておきます。08.2.25
評価…★★3
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