ピラフともチャーハンとも異なる食感の「えびめし」(920円)は、この店が発祥。
「えびめし」と欧風カレーを半量づつ味わえる「ハーフ&ハーフ」(950円)
外観の雰囲気は嫌いではないが
店内はテーブルもカウンターも手狭。とくにカウンターは壁に向いているので閉塞感がある。カウンター主体にすればスッキリすると思うのだが
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創業55年の味と雰囲気を守るカレーと「えびめし」の店。昭和27年に開業して以来、レトロな佇まいで知る人ぞ知る渋谷の老舗だ。元々は画家だった先代の主人(現主人の父)が、本業の片手間に始めたのがはじまりで、上野の精養軒で働いていたコックさんとともに二人三脚で経営し、本格的なカレーの店にしたという。
カレーは欧風(中辛)、インド風のカシミール(辛口)、ベンガル(極辛)と、3種類の味がある。また、スープカレーやハヤシライスなど、メニューの豊富さも特徴。どのメニューも丁寧な作りで、概ねルーとご飯が別々になって提供される。上品でありながら親しみの持てる味わい。ただ、「まんてん」や「シュクリア」など、本サイトで紹介する他店のようなインパクトがあるかというと、ない。味の特徴が挙げづらいのが難点といえば難点である。
ついでに言うと、開業当時はハイカラな高級店だったせいか値段も少し高め。一番安い豚バラカレー(580円)は妥当だが、それ以外のポークやチキンは780〜950円だから、カレーだけを食べに気軽に立ち寄る店にしては、敷居の高さも感じられる。(大盛100円増)
実は私がこの店のメニューでおすすめしたいのは、カレーよりも「えびめし」である。ピラフともドライカレーともまた違った食感の黒い焼き飯。小ぶりなエビをはじめ、錦糸卵とグリンピース、十数種類の食材と秘伝のスパイスが混ぜ込まれている。辛くはなく、不思議な甘味をもった味に仕上がっている。
いまや「岡山県の名物」として知られ、当地のスーパーでは冷凍食品まで売られているこの「えびめし」だが、もともとはこの「いんでぃら」で修行したシェフが故郷の岡山に帰って流行らせたのだという。920円と値段は少し張るが、一度食べてみる価値はあると思う。しかし、東京で流行らず岡山で流行ったのは何故なのだろうか。
この本店のほか、道玄坂、学芸大学に支店がある。かつては有楽町にも系列店があったが、残念ながら閉店している。本店はテーブル席が主体だが、ちょっと手狭な感じがして落ち着けない。昔のままの雰囲気を大事にしているのだろうが、とくにカウンター席は窮屈な感じがする。
ランチや定食もやっているが、食べたことがない。あくまで個人的な意見だが、カウンター席を主体にしてメニューをカレー専門に絞り、単価を安く抑えてくれれば、もう少し足が向く雰囲気になると思うのだが。いろいろ書きはしたが、騒がしい渋谷にあっては今後も応援したい店のひとつなので、もう少し頑張ってほしい。(哲坊)
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