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第二話:焦土洛陽にて
於我(おが)は道中、於扶羅や弟の呼厨泉と武術の稽古をしつつ南下した。
彼らの武術は漢の地の武術とはかなり異なっている。
基本的には、馬上での武術である。
あまり馬術の得意でない於我は何度も転落し、常に満身創痍の状態であった。
しかし、復讐心が於我を支えていたのである。
だが、於扶羅も自分を無碍に扱う匈奴の人々に対し、復讐心を抱いていた。
於我は、於扶羅の復讐心まで飲み込んでいくようであった。
一行は、洛陽に到着した。
しかし、そこは於我の知っている洛陽ではなかった。
あの、天国のように美しいこの世の極楽とも言うべき都の姿は跡形も無く、
於我は愕然とした。
あれだけの巨大な都市を一瞬にして焼き尽くすことが出来るとは・・・。
およそ人間業ではないという思いで涙がこぼれ落ちた。
於扶羅も皇帝がこの地にいないことを知り、同じく茫然自失となっていた。
配下の去卑が、於扶羅をそっと座らせた。
沈黙が続く。
それから何時間が経過しただろう。
於扶羅はすっくと立ち上がり自分についてきてくれた部下に対し宣言した。
「もはや、この地にいても何も出来ない。
我々は、再び北へ帰り、再起を図る!
そして、匈奴のみならず漢奴の地をも飲み込んでくれようぞ!
我についてくる者は後へ、去りたい者は、今すぐ立ち去れい!!」
その言葉を聞いた兵士達は、歓声を上げた。
しかし、於我は一人違う決意を胸に秘めていた。
呼厨泉が、心配になり於我に声をかけた。
「於我。我らについてきてくれるのだろう?」
於我は、首を横に振り言葉を返した。
「私は、今まで両親を殺した賊に対する復讐心のみで一杯でした。
しかし、それはちっぽけなことだと今、わかりました。
親を殺した賊を生んだのも、この都を焼いたのも、漢が悪いのです。
この国がいけないのです。私は、長安に行き、皇帝を討ちます。
今まで、大変お世話になりました。
右賢王閣下・・・いや、於扶羅単干によろしくお伝えください。」
呼厨泉は、その迫力に引き止めるすべを失っていた。
於我は、そのまま洛陽を後にした。
「そうか、去ったか。まだ、教え足らぬ事もあるが致し方あるまい。
彼の武運を祈る他あるまいて。」
於扶羅は、於我の後ろ姿を眺めながら思いを馳せていた。
自分の夢を於我に託すように・・・。
於我が洛陽を去り、しばらく経ったある日、
新荘(しんじょう)という若者に出会った。
何でも、曹操に仕官するため勉学に励んでいるらしい。
「ほう、於我殿もこの世を憂いているのですな。
しかし、長安に行っても何も変わらないでしょう。
私と共に、曹将軍に仕え、共に世直しに参画いたそう。」
於我は新荘の言葉に心が傾きつつあったが、曹操に対しては
あまり好印象を持っていなかった。
なぜなら、彼は策士であり人を欺くのに長けている。
そのような人物の元で本当の良い国作りが出来るのであろうか。
於我の中では曹操は新国家の柱石とはなり得ないのである。
「新荘殿。折角のお誘い、嬉しく思いますが、私は成すべき事があります。
この度は、失礼いたします。」
そう言うと、新荘に頭を下げ立ち去った。
長安へ単身乗り込んでもどうしようも無いことは薄々感じていた。
しかし、行かずにはいられないのである。
この性分は一生直ることは無いであろう。
長安へ向かう途中、山賊や盗賊に遭遇した。
彼らを仕方なく討ち取る。
その度に、心が痛んでいた。
彼らを斬ったことにではなく、
この国が彼らをここまで追い込んだことに対してである。
やがて、於我の武勇伝を聞き、徐々に配下になりたいと
名乗り出る人物が集まってきた。
その数は、長安に着いた頃には100人を超えていたのである。
だが、逆にその人数が災いとなり、
長安に近づいたところで漢軍に蹴散らされてしまった。
於我は失意のうちに、荊州の南にある零陵という町にたどり着いていた。
そこは何やら故里ににている気がして心が落ち着いた。
そのため、心と体の傷を癒し再起を期すべくこの町に滞在することとしたのである。
於我は、この町で自警団を編成し町の治安を守っていた。
ある日、於我は住民と共に酒宴を開いた。
そして、運命の時を迎えることとなった。
哲坊(てつぼう)との出会いである。
やがて、於我は哲坊に夢を託したと後世に伝えられている。
−完−
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