12月22日 大阪府立体育会館
オープントーナメント「King of Kings」
Bブロック第1、第2試合 観戦報告書


大阪冬の陣、勃発。
10月に行われたAブロックでは山本、金原ら主力が敗退し、
勝ち残ったのはリングス勢ではミーシャただ1人。
この非常事態に、Bブロックは無差別級王者の田村はじめ、
ランキング1位〜4位の選手も勢揃いし、未知の強豪を迎え撃つ。
リングスの威信をかけての闘いが始まる…。


実力者コピィロフ、柔術使いを秒殺!
第1試合 (5分2R、以下同じ)

×
カステロ・ブランコ
181cm 101kg
(ブラジル)

VS
1R 0:16
膝十字固め


アンドレイ・コピィロフ
187cm 121kg
(リングス・ロシア

カステロ・ブランコは、ブラジリアン柔術大会3連覇、
世界柔術大会スーパーヘビー級王者
という、
とんでもない実績を持つ格闘家。年齢的にも32歳と、
格闘家として油の乗り切った男で、
決勝進出に最も近い存在といっても過言ではない。
対するは、リングス・ロシアの「業師」コピィロフ。34歳。
前田やハンに勝利したこともある実力者だが、
リングスの本戦には2月以来の参戦であり、
彼に期待を寄せるファンが多かったとは決して言えない。
(私は滅茶苦茶期待していたのだが…(笑))
ただ、どちらも寝技のプロであり、
かなりの好勝負を展開してくれるのでは、という見方は強かったようだ。

両者ともにグローブはつけずに登場。
ゴングが鳴るやいなや、バックを取られたコピィロフ。
しかし、この体制からかがみ込んで、股間からブランコの片足を取り、
膝十字を鮮やかに決める。
ブランコはしばらく耐えたが、持ち味を発揮する間もなくギブアップ。
あまりの快勝に会場も騒然!

コピィロフコールも沸き起こった!

Aブロックとは違い、第1試合から一気にヒートアップした。


フィエート、アメリカの喧嘩屋を粉砕!
第2試合

×
タイロン・ロバーツ
180cm 95kg
(アメリカ)

VS
2R 0:09
KO


リカルド・フィエート
184cm 94kg
(リングス・オランダ

日本のリングスマットに登場したのはたった2試合だが、
その強烈なキャラで瞬く間に存在をアピールしたフィエート。
対するは、バーリトゥード系の大会で13勝無敗の戦績を誇るロバーツ。
ともに打撃を得意としており、激しい打ち合いが展開されるが、
ロバーツはボクシングスタイルのため、
フィエートのローキックにぐらつく場面も。
2R開始早々、ロバーツの動きを見切ったか、
フィエートの強烈な左ハイキックが顔面をとらえる。
ロバーツはゴング後も立ち上がれず、担架で運ばれて退場。
フィエート強し!
スミス、得意の打撃出せず苦戦。
第3試合

×
ブランドン・リー
185cm 96kg
(アメリカ)

VS
0-1
2 R 判定


モーリス・スミス
188cm 101kg
(アメリカ

過去に数々の伝説を築き上げた「黒いボーイング機」スミスが、
ヴォルク・ハンの代役とはいえ、リングスマットに帰ってきた。
対するは、マーク・コールマンの弟子でもあり、
あのブラガと名勝負を演じたこともあるブランドン・リー。
(ブルース・リーの息子と同じ名前だが、何の関係もないようだ…?)

スミスの打撃か、リーの寝技か、といった試合かと思われたが
案に相違してスミスが巧みなグラウンドテクニックを見せる。
リーも、スミスの打撃をうまく殺して、寝技合戦に持ち込んでいるから、
かなり技術的にはレベルの高い試合をいえた。
しかしともに決め手を欠いたのも事実で、
それが1-0の判定の結果となった。正直、延長戦も観たかった。


グレイシー狩りに気合充分だったが…
第4試合


ヘンゾ・グレイシー
178cm 80kg
(ブラジル)

VS
1R
1:25
腕ひしぎ
十字固め

×
坂田 亘
174cm 89kg
(リングス・ジャパン

「グレイシー 一族好感度ナンバー1」のヘンゾ。
入場を終えたヘンゾは、
檻の中の獅子のようにリング上を徘徊。貫禄充分である。
対する坂田は純白のガウンで入場。気合充分である。
対峙してじっと睨みつける坂田に握手を求めるヘンゾ。

ゴングが鳴り、ローを何発か放つ坂田。
「いけるのではないか」と思った矢先、不用意に出したローを捕まれ、
寝かされてしまう。狼狽する坂田をあざ笑うかのように、
有利な体勢のまま腕をとるヘンゾ。

今回、坂田には期待の声も高かったのだが、何もできず完敗。
格の違いをまざまざと見せつけられた試合であった。


山が崩れた…
第5試合


ギルバート・アイブル
187cm 102kg
リングス・オランダ

VS
1 R
2:18
腕ひしぎ
十字固め

×
ビターゼ・タリエル
200cm 155kg
(リングス・グルジア


ついに登場した、OPFグローブ着用版タリエル
あの驚異的な破壊力の正拳突きが、もし顔面にヒットすれば、
さしものアイブルもひとたまりもないだろう。
しかし、アイブルは開始直後から果敢に攻め立てる。
見れば、顔面パンチを嫌って防戦一方のタリエルの姿が。
体格差をものともしない、アイブルの怒涛の攻めは、
明らかにタリエルを狼狽させた。
アイブルはタリエルからダウンを奪うのは困難とみたか、
意外にもグラウンドで腕十字を繰り出し完勝。
坂田と同様、タリエルに期待したファンには苦い結果となった。
やはり「ピンクのスパッツ」がいけなかったか…(笑)。
個人的にはやはり空手着で登場してほしかった。
KOK初の延長戦突入
第6試合

×
C・ヘイズマン
181cm 97kg
(リングスオーストラリア)

VS
延長戦判定
(1−2)


高阪 剛
181cm 102kg
(リングス・ジャパン

1ヶ月前にUFC-JでKO負けを喫している高阪だったが、
さほどその影響はなかったように見えた。
1年前だったら高阪が圧勝していたであろう、リングス勢同士の対戦。
しかし、ヘイズマンの成長には眼を見張るものがあり、
互角の勝負を展開する。それどころか、立ち技では
あの変則的なサイドキックでうまい牽制を見せ、高阪を嫌がらせた。
2R終了時はまったくの互角の闘いのため、KOK初の延長戦に突入。
延長戦でわずかに有利なポジションをキープした高阪が
辛くも接戦をものにした。
 ボリス、ブルガリア勢の意地見せた!
第7試合

×
ティム・ラジック
(アメリカ)

VS
1R 2:23
裸絞め


ボリス・ジュリアスコフ
(リングス・ブルガリア

ラジックは、かつて高阪とUFCのリングで好勝負を展開し、
アマレスやボクシングの実力者として知られる。
ただ今回の外部選手の面子では実績面で見劣りする感もあった。
それだけに、ジュリアスコフとは良い勝負になるのでは、
という印象はあったがカード的には魅力がうすい。
事実、この試合の前にトイレに立つ人々も…(笑)。
しかし、レベル的には決して低くない試合だった。
途中、ラジックが反則の顔面パンチ、
お返しに(?)ジュリアスコフが反則のヒールホールドを繰り出して
試合が中断する場面もあったが、
一瞬のスキをついたジュリアスコフのスリーパーが極まった。
ラジックはショックのあまり失神し、しばらく起き上がれず。
カステルの欠場により代役での出場であったが、
ブルガリア勢の意地を見た気がした。
重い重い王者の肩書き…
第8試合

田村はOPFグローブ着用、レガースなし、
紅白のスパッツというコスチューム。

×
デイブ・メネー
178cm 89kg
(アメリカ)

VS
2R
判定(0−3)


田村 潔司
180cm 88kg
(リングス・ジャパン

「リングス無差別級王者」…この肩書きがこれほど重く、
田村の肩にのしかかった時があっただろうか。
田村は入場の時から表情が硬かった。
相手のメネーは、修斗のランキング2位の保持者。
体格では身長で田村より2cm下回り、
体重で1kg上回っているだけでほぼ互角である。(当日発表のデータ)
OPFグローブ着用、レガースなし、紅白のスパッツという
いで立ちで登場した田村は、いきなりボクシングスタイルで
パンチを繰り出し、メネーをスリップダウンさせる。
終止アグレッシブに攻める田村。

メネーもさるもの、何度か田村をスリーパーに捉えかけるシーンもあり、
ヒヤヒヤ。2Rも互角の試合を展開していた両者、
終了真際のスタンドの攻防で田村が顔面パンチをヒットさせ、
メネーがダウンしかけるがタックルでごまかす。
これがポイントの差となったか、3-0の判定勝ちをもぎ取った。


瞬殺…。
第9試合


アンドレイ・コピィロフ
(リングス・ロシア)

VS
1 R 0:08
アキレス腱固め

×
リカルド・フィエート
(リングス・オランダ

奇しくも実現した、異色の顔合わせ。
ゴングと同時に飛び掛かるフィエート。
それを軽くいなして引き倒し、
足を取ったコピィロフが電光石火のアキレス腱固め!

コピィロフは第1試合と併せてなんと24秒
決勝戦への切符を手にした。
確かに運もあったが、断言しよう。
コピィロフは間違いなく世界最強レベルの格闘家である!


高く厚いグレイシーの壁。
第10試合

×
モーリス・スミス
(アメリカ)

VS
1R 0:50
V1アームロック


ヘンゾ・グレイシー
(ブラジル

KOKという舞台が実現させた夢のカード。
スミスは第1試合で素晴らしいグラウンドテクニックを
披露している。あれだけの技術があれば、なんとか寝技をしのぎ、
ブレイク直後にでもヘンゾの顔面に
ハイキックを叩き込むことも可能なのではないか?
…ということも期待したのだが、打撃を出す間もなく寝技に持ち込まれ、
強引に腕を伸ばされてしまった。
坂田に続き、モーリスも完敗。圧倒的すぎる連勝。
ヘンゾも間違いなく世界最強クラスの格闘家だ。

しかし、こうなるとハンの欠場が本当に悔やまれる。


高阪無念、三度苦杯…
第11試合

×
ギルバート・アイブル
(リングス・オランダ)

VS
1 R 1:17
TKO


高阪 剛
リングス・ジャパン)

2回戦の第1、第2試合の合計タイムは、わずか58秒。
休憩時間の10分と併せても、ヘイズマンと15分闘い抜いた高阪には
酷なほど短いインターバルだった。
しかも対戦相手は
タリエルを難なく下し、ぴんぴんしているアイブルなのだから。
高阪はアイブルを過去2度の対戦とも苦杯をなめ、苦手としている。
いささか集中力を欠いた高阪は、なんとかアイブルのパンチを
しのいでいるかに見えたが、倒れ際に膝(アッパーにも見えた)を
食らって起き上がれず、ドクターのチェックを受ける。
結局、右側頭部から流血のためダメージが大きく続行不可能、
TKO負けとなってしまった。
ジャパン勢、田村を残し全滅…。
田村、涙の決勝進出!!
第12試合

×
ボリス・ジュリアスコフ
(リングス・ブルガリア)

VS
2R 1:17
裸絞め


田村 潔司
(リングス・ジャパン

相手がグローブなしのジュリアスコフとなり、
OPFグローブを外して本来のスタイルに戻った田村。
「リングスらしい」試合展開が予想されたが、
何しろ1度倒れたらおしまいのルールである。
思い切った攻撃に出られず、攻めあぐねる田村。
ジュリアスコフは188cmの長身を活かして組み付き、
ヒザ蹴り、スリーパーで田村を追い込む。
「危ない」と思わせる場面もあり、このまま判定に行けば
負けもあり得るといった試合展開であった。
途中、ジュリアスコフはグラウンドの顔面打撃でイエローカード。
田村はこれでかなりダメージを受けた模様で1分近く中断。
「はやく立上がってくれ、田村」と焦れる観客。
確かに、そんなことでうずくまっていては駄目だ。
イエローカードのポイント差で勝っても意味がないではないか。
グラウンドでも苦しんだが一瞬のスキをついてジュリアスコフの首をとり、
執念で勝ちを拾った。

田村は勝ったと同時にコーナーポストへのぼり、
両手でガッツポーズ。96年の山本戦以来の喜びを全身で現わした。
控え室では涙も見せたようだが、
田村にとっては95年のパトリックスミス戦(K-1リベンジ)にも
匹敵するプレッシャーだったに違いない。


総 評
2回戦では高阪も敗れ、日本人はただ1人となってしまった
プレッシャーの中で、連戦を勝ち抜いた田村はさすがだ。
リングスファンをやっていて本当によかったと思える大会であった。

今回はリングス勢が奮戦し3人残り、Aブロックとは逆の形となった。
2月の武道館で実現する決勝トーナメントは、
絶対に見逃せない。


試合後、格闘ファン36人集結の大オフ会へと突入…(笑)

 

  
「KING of KINGS」トーナメント表Bブロック
1回戦
2回戦
決勝戦(2000年2月26日)
進出選手(上位4名)

×カステロ・ブランコ
  vs
○アンドレイ・コピィロフ

◯アンドレイ・コピィロフ
  vs
×リカルド・フィエート

アンドレイ・コピィロフ

ヘンゾ・グレイシー

×タイロン・ロバーツ
  vs
○リカルド・フィエート

×ブランドン・リー
  vs
○モーリス・スミス

×モーリス・スミス
  vs
◯ヘンゾ・グレイシー

○ヘンゾ・グレイシー
  vs
×坂田 亘

○ギルバート・アイブル
  vs
×ビターゼ・タリエル

○ギルバート・アイブル
  vs
×高阪 剛

ギルバート・アイブル

田村 潔司

×クリストファー・ヘイズマン
  vs
○高阪 剛

×ティム・ラジック
  vs
○ボリス・ジュリアスコフ

×ボリス・ジュリアスコフ
  vs
◯田村 潔司

×デイヴ・メネー
  vs
○田村 潔司

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