観る読む三国志



映画 三国志(大いなる飛翔)

制作

中国 楊吉友監督

公開

1990年夏

メディア

ビデオ版 全1巻(130分)

おすすめ度

★★★★★★6


出演/王文有(劉備)、侯少奎(関羽)、青格勒(張飛)、李雨森(曹操)、海軍(呂布)、趙彦民(諸葛亮)ほか



 平成2年(1990)に劇場公開された実写の中国映画。構想5年・撮影3年・制作費15億円というスケールによる「劇場版三国志」ということで大々的に宣伝されて、それなりに話題になった作品。当時、高校生だった私も期待に胸を躍らせて劇場へ足を運んだが、その期待は大きく裏切られてしまった。

私と同じように楽しみにしていた人も多かったようで、劇場には7〜8割方、客が入っていたし、夏休み中ということで親子連れも多く見かけた。だが、始まって40〜50分もすると周りの席から溜息とアクビが漏れ始め、中盤に差し掛かると徐々に寝息が・・・。

途中で隣をみると、一緒に行った友人も寝ていた(笑)。一般の映画としては長時間(2時間10分)のため、終盤には「まだ終わらんないの?」と、子どもが傍の父親に尋ねる声も聞こえてきた。普通なら映画館の中でそういう子どもが居たら気に障るところだが、私も苦笑するしかなかった。

何が問題なのかといえば、桃園の誓い〜董卓対連合軍〜官渡の戦い〜三顧の礼〜赤壁の戦いと、一連の流れとしては良いのだが、これらのエピソードを2時間強では描ききれるはずもない。よって、カットの連続で「広く浅い」映画になってしまっているのである。

どの場面も触りだけ急ぎ足で流されてしまい、深みや余韻がないのだ。これでは三国志ファンには物足りず、初心者には何が何だかわからない。実は中国版は3時間強の尺があったらしく、全編見てみたかった気もするが…。

唯一の見所は戦闘シーンぐらいか。とても数万人規模の戦いには見えないが、官渡の戦いなどで、軍勢がぶつかるシーンはまずまずの迫力。序盤の董卓軍対連合軍の戦いでは、呂布vs劉備三兄弟の戦闘もあったし、関羽が五関を突破する場面ではちゃんと1人1人を倒す場面が描かれていた。赤壁では本物の船団を燃やしてもいる。

長坂の戦いで趙雲が阿斗を抱いて曹操の大軍を突破する場面は傑作である。趙雲役の俳優は、若い頃のジェット・リーに似てまずまず格好いいのだが、何故か自分から馬を降りて戦い、なぜかキックを使ってカンフー映画のような立ち回りを展開するのだ。阿斗を抱いているはずの胸を敵に蹴られたりもする。テレビゲーム「天地を喰らう2」や「真・三國無双」の元ネタは案外これかもしれない(笑)。

キャスティングは呂布など、まずまずカッコいい人もいるが、京劇風の演技やメイキングが目立ち、当時としても古臭い印象。とくに孔明は意地悪そうなキツネ顔の役者にブーイングを浴びせたいほどだった。

この作品、公開当時は「第一部・大いなる飛翔」という副題がついていたように、続編も制作されたという噂もあるが、本国でも余程に不評だったのだろう。結局日本に上陸することはなかった。すでにビデオレンタル版が登場したときには副題は取り払われていた。個人的には、第二部も観れたら良かったと思っているが。

中国が国家の威信をかけ、莫大な予算をつぎ込んで制作されたという宣伝文句だったが、果たして本当だったのだろうか。しかし、この映画の大コケをバネに後の長編ドラマ(三国演義)は、気合の入ったものになったのかもしれない。そういう意味では意義ある作品といえる。

まあ、「レッドクリフ」以前の貴重な実写映画でもあるし、今となっては突っ込みどころ満載なので案外楽しめるかも。ソフトはビデオレンタル版しか無かったが、DVDでは「三国志 武将列伝」としてリリースされているので、ご興味のある方はぜひ。

※ちなみに、本作は初の「劇場版三国志」として認識されてもいるが、正確には1984年(昭和61年)に上陸、公開された『三国志外伝・曹操と華佗』(原題:華佗与曹操)という作品が、三国志作品としては先行である。(哲舟)




董卓を暗殺した直後の呂布。呂布は結構
神妙な顔をしているのに対し、隣の蝶蝉は
うっすら笑みさえ浮かべている。
衣装は相当に安っぽい。

左が曹操。この役者は他の作品で
よく曹操を演じていたようである。
右は張遼。この映画では曹操配下で
なぜか張遼ばかりが活躍する。ちなみに
呂布を裏切って縛るのも張遼…(笑)。

孔明に騙されてカッとなっているのは、
ちょっと凶暴な魯粛である(笑)。

これが長坂の戦い。馬から下りてキックを
見舞う趙雲。「無双」の原型ですな。

その少し前のシーンで、ビ夫人が井戸に身を
投げるシーンがあるのだが…。

身を投げて趙雲が振り返った瞬間には、
まだ衣服と手が見えている…(笑)。

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