プロ野球 ファミリースタジアム

ジャンル

野球ゲーム

発売

昭和61年(1986年) ナムコ

ハード

ファミコン、PCエンジン、アーケード
スーパーファミコン、NINTENDO64
プレイステーションなど

備考

ワールドスタジアムも含めた、90年代前半までのシリーズの総評を記します。


 任天堂の「ベースボール」(83年)から3年後、ナムコが生み出した野球ゲームの代名詞。選手別に設定された能力、自分で操作する守備など、様々な新要素を盛り込み、同ジャンルのスタンダードとなった偉大な作品である。ジャストミートすれば投手でもホームランが狙えるなど、本物の野球を思わせる絶妙なバランスで多くの野球ファン、ゲームファンを虜にした。


 以下、ファミスタシリーズの主なタイトルを上げ、その歴史を振り返る。

プロ野球 ファミリースタジアム(初代)  発売/1986年12月  ハード/ファミコン

昭和61年の暮れに発売された記念すべき第1作。この年のプロ野球は西武が広島を下して日本一になっているが、ゲームでは巨人をモデルにした「ガイアンツ」が一番先頭になっているあたり、当時の人気情勢がよくわかる。また、前年には阪神が日本一になっており、このゲームにおいても阪神の超強力クリーンアップ(ばあす、かけふ、おかだ)が健在。大洋のスーパーカートリオもいる。ナムコスターズも本作から登場。

パ・リーグの独立チームは西武だけで、阪急・南海・近鉄は「レイルウェイズ」、日本ハムとロッテは「フーズフーズ」という連合チームで登場。強いけどなんだか悲しかった。当時のパ・リーグの扱いの低さを物語るが、この作品でパ・リーグに興味を持てたのは事実で、私はこの年からロッテのファンになった。(写真/翌年から中日へ移籍する三冠王・落合と広島のエース北別府の勝負!)
哲坊評価…★★★★★★★★★9


プロ野球 ファミリースタジアム’87  発売/1987年12月  ハード/ファミコン

初代からちょうど1年後になった第2作目。以後、ファミコン版はクリスマス前の発売がしばらく恒例となる。しかし、前作のパッケージに「’87」というシールを貼っただけだったのは、今考えると手抜きもいいところだ。中身は前作に比べて打球が飛びにくくなっており派手な打撃戦が減ったが、その分緊迫した投手戦が増えて良かったと思う。

新チームとしてメジャーリーガーズ、阪急をモデルにしたブラボーズが加わり、全12球団になったが近鉄・南海・日本ハム・ロッテの扱いはそのまま。ただ、なぜかデモ画面にだけロッテ(オリエンツ)が登場したのには苦笑した。制作スタッフにロッテファンがいたのだろう。だったら登場させてくれよ…(笑)。(写真/隠しチームロッテの主砲高沢と、当時西武で売り出し中の工藤)
哲坊評価…★★★★★★★★★9


プロ野球 ワールドスタジアム  発売/1988年5月  ハード/PCエンジン

第3作目はPCエンジンでの登場。ハードの性能を生かし、グラフィックが滑らかになり土や芝の質感がよく再現されている。また、懐かしの名選手で構成された「オールド・スターズ」や野球漫画のヒーローたちで構成された「オール・ドリームス」という強力なチームが登場。だが、パ・リーグ5球団はファミコン版同様の扱いで正直憤りを覚えた。操作感覚や打球の飛び方、サウンドはファミコン版のほうがシックリ来ていたし、余分な所に容量を使っていたように思えた作品。

パ球団でロッテ(オリエンツ)だけ、なんと隠しコマンドで使えたのだが、選手が不気味な白い影みたいに表示されていた。あれは一体なんだったのか…疑問である。その後PCエンジンでは1991年3月に「ワースタ91」も発売された。(写真/巨人・桑田と、ナムコスターズの超俊足1番打者ぴの。弱さが売りだったはずのナムコスターズが、この頃から普通に強くなってきてむかついた)
哲坊評価…★★★★★★6


プロ野球ワールドスタジアム  発売/1988年夏頃  ハード/アーケード


懐かしい「こうらくえん」球場。

KK対決。巨人だけ選手名が変。

ゲーセン”移植版”のファミスタといえる存在が、このアーケード版「ワースタ」である。家庭用と違ってセパ全12球団でプレイでき、投手や代打の数も多く(6人ずつ)、さすがはアーケード版といった感じ。その他、写真のようにバックスクリーンにスコアだけでなく選手名も表示。試合後のナムコスポーツもパワーアップして、見事な演出がなされていた。その選手名だが、この時期にプロ野球機構側から「肖像権」に関してのクレームがつき、以後実名の使用が自粛されるようになった。

ただ、本作では修正が間に合わなかったのか、巨人の選手名だけがわざとらしく ( くわた→くわがたという具合に)アレンジされているが、もしかすると、クレームをつけたのは巨人球団だったのかも…。いずれにしても、この事件のせいで感情移入の度合いが激減したのは確かである。

このアーケード版ワースタはサウンドも秀逸で、ノリのいいBGMがゲーセン中にやけに鳴り響いていたのを思い出す。ホームランを打ったときの「ライトバック、ライトバック、入った入った、ホームラーン!」という可愛いボイスをご記憶の方も多いだろう。

CPUの打撃が異様に上手く、試合後半になるとどんな打者でもジャストミートさせてホームランを打つので、とんでもない打撃戦になることも多かった。アーケード版では、以後「89開幕版」「ワースタ90」と制作され、「熱チュープロ野球」が出る2002年ごろまで続いたが、この初代が一番、ゲームらしい味があって好きだった。とくに「90」などは選手データなどが手抜きとしか思えないほど雑で幻滅させられたものだ。
評価…★★★★★★★★★★10
(初代ワースタの評価)


試合後はナムコスポーツが賑やかに祝福。
ちゃんと絵が動くし、メッセージのパターンも豊富

村田兆治(ロッテ)対門田博光(南海)という
昭和のパ・リーグファン感涙の対決も。
各チームの代打には懐かしの名選手もいた


プロ野球 ファミリースタジアム’88 発売/1988年12月 ハード/ファミコン

ファミスタとしては初めてセパ12球団が勢揃いしたが、上記のクレームによる理由で全選手名のアレンジ化がつくづく残念。その代わり、今作から好調選手の存在、ラッキーセブン、エラーの概念、ファインプレー、球場の選択など新要素が次々と追加された。しかし、内野安打が出すぎるなど、欠点も目立ち始めた。

実際の球界は激動だった。近鉄の後半戦快進撃と伝説の川崎球場10.19、そして最終的にパ・リーグを制した西武が星野監督率いる中日を下して日本一に。さらに、シーズン終盤に阪急と南海が身売りして新球団が誕生するなど、昭和最後の印象深い年である。(写真/中日の快速エース小松と、ロッテ横田。「やっとロッテでプレイできる」と思った矢先の選手改名…心底残念に思った)
哲坊評価…★★★★★★★★8


ファミスタ’89 開幕版!! 発売/1989年7月 ハード/ファミコン

平成元年。同年のデータをもとに、年末発売が恒例だったファミスタだが、初めて開幕時のデータをもとにして、夏に発売された作品。さらに今作から愛称の「ファミスタ」が正式なタイトルに。上に書いたとおり2球団が身売りし、阪急がオリックスに、南海がダイエーに変わり新たなスタートを切った年で、何かと話題が多かった。オリックスは「ブルーサンダー打線」の活躍で開幕から快進撃。ダイエーは投手力がままならずに苦戦と明暗を分けた。

ゲームのほうは、88から選手のデータが変わっただけで、さほどの変化はなかったと思う。(写真/トレンディエースと呼ばれた日本ハム西崎には「たきだし」という凄い名前が付けられていた。打者の「あっぷる」とはダイエーの新外国人アップショー)
哲坊評価…★★★★★★★★8


ファミスタ’90  発売/1989年12月  ハード/ファミコン

開幕版に続き、89年暮れには本作「ファミスタ90」が早くも登場。これより、タイトルには翌年の年号が付けられるようになった。内容については選手データだけでなく、BGMやグラフィックの色調が一新され、かなりイメージが変わった。球界は、昨年10.19で涙を飲んだ近鉄がパ・リーグ制覇。しかし、日本シリーズでは巨人に3連勝の後に4連敗を喫し、初の日本一はならなかった。

(写真/この年、春先に200勝を挙げたロッテの大エース、マサカリ投法・村田兆治と、終盤の西武戦で優勝を決定づける4打数連続ホームランを打った近鉄のラルフ・ブライアント)
哲坊評価…★★★★★★★★8


ファミスタ’91  発売/1990年12月  ハード/ファミコン

ご覧の通り、タイトル画面が今までとはちょっと変わり、少し子どもっぽくなった。内容的には、今作から守備力、肩の強さといった新パラメータが加わり、むやみに代打を送ることができないようになった。リアルといえばリアルだが、シンプルさが売りでもあったファミスタに、色々と細かい「おまけ」が付いて煩わしい感じがしたのも事実。このあたりから、自分では購入しなくなったと思う。

(写真/投手8冠を総なめにしたルーキー、今や大リーガーのトルネード野茂と、中日の立浪)
哲坊評価…★★★★★★★7


ファミスタ’92  発売/1991年12月  ハード/ファミコン

今作からは、人気のパラメータが追加。人気の高い選手が打席に立つと歓声が起きるというもの。実際のプレーに影響はないが、搭載されたオールスターモードに選ばれやすくなるという利点があった。その人気度、結構制作者の主観が入っているように思えたが…。しかし、せっかくのオールスターなんだから、好きな選手を選ばせてくれたって良いのに、と感じた。他にも打撃練習や守備練習モードなど色々とおまけの要素が加わったが、別に嬉しくもなかったというのが正直な気持ちである。

(写真/当時ロッテのルーキーで、のちに頭脳派投手として知られる小宮山と、阪神で大活躍したオマリー)
哲坊評価…★★★★★★★7


スーパーファミスタ  発売/1992年3月  ハード/スーパーファミコン

初めてのスーパーファミコン版。すでにスーパーファミコン時代で、そろそろ旧ファミコンを押入れにしまう人も多くなっていた頃だ。待望の「スーパーなファミスタだ!」と思って即購入したが…ガッカリだった。スーパーファミコンは処理速度が遅く、アクションゲームには不向きな性能だったのである。初期にあった軽快な操作感は失われ、もっさりした選手の動き、トロい画面切り替えなど、全体的にスローなテンポにイライラ。また、野手の肩が異様に弱く、すぐに送球がゴロになってしまうという不自然な作りに大ブーイングだった。唯一良かったのは、この年から選手名が野球機構の許諾を得て実名に戻ったことぐらい。
哲坊評価…★★★★4


ファミスタ’93  発売/1992年12月  ハード/ファミコン

画面写真を見て「なんじゃこりゃ〜」と泣きたくなった作品(笑)。アップ画面の選手がスリムになったのがその理由である。守備画面ではそのままなのに不自然極まりない。選手が実名に戻った以外のことは、ほとんど記憶にない作品である。たぶん、あまりプレイしなかったのだろう。なお、この年はロッテオリオンズが川崎から千葉に本拠地を移し、「千葉ロッテマリーンズ」として生まれ変わった。(写真/オリックスのエース星野対巨人駒田)
哲坊評価…★★★★★5


ファミスタ’94  発売/1993年12月  ハード/ファミコン

前作があまりに不評だったのか、選手の体型が元に戻された。選手も実名で、完成度としては悪くなかったはずである。しかし、ほとんどプレイした記憶がない。プレイする側も制作側もモチベーションが低かったのだろう。すでに時代はスーパーファミコン、そしてプレイステーションへと移ろうとしていた。そして、この年にコナミが「実況!パワフルプロ野球」シリーズを開発。ここに至り、野球ゲーム界におけるファミスタの天下は終わりを告げることとなる。(写真/ダイエーホークスの村田と、この年から誕生した横浜ベイスターズで大活躍したローズ)
哲坊評価…★★★★★★6


スーパーファミスタ4  発売/1995年3月  ハード/スーパーファミコン

「スーパーファミスタ」シリーズは、初代に比べればかなり改善が図られ、2、3と随分遊べるようにはなっていた。そして今作の「4」だが、「パワプロ」に対抗してか、とうとうファミスタにも投球の高低の要素が取り入れられた。だが、もはやファミスタとは全然違うゲームになった印象を受ける。個性的な球場や派手な演出で工夫が図られてはいたが空回りの観があった。翌96年「スーパーファミスタ5」が作られたのを最後に、同ハードでのファミスタも終わりを告げる。以降、ファミスタに代わってワースタシリーズがプレイステーションやアーケードでその命脈を受け継ぐが、時代の流れには抗えずナムコもリアル路線の野球ゲーム「熱チュープロ野球」や「ベースボールライブ」の制作をメインにしてゆく。
哲坊評価…★★★★★5


 

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