−9回表−
3−3の同点で迎えた9回、コンコルド打法・淡口が
球威の衰え始めた小川から2塁打を放つ。1死2塁。
ここで、ロッテは投手を抑えの切り札・牛島に代えた。
しかし、鈴木がその牛島からすかさずライト前にヒット!
淡口の代走・佐藤が本塁を突くが、
ライトからの好返球で三本間に挟まれ、タッチアウト!
三本間で呆然としたまま涙を流す佐藤。これで2アウト。
ダブルヘッダーの場合、ルールにより第1試合は延長戦がない。
引き分けでは勝率が届かないため、その時点で西武の優勝が決まってしまう。
あとがない近鉄……。
そこに仰木監督が代打として送り込んだのが、
V2戦士のベテラン捕手・梨田である。
このとき、牛島は「1塁が空いていたので歩かせようと思ったが、
この日の近鉄選手はみんな同じ気迫で来る。だから敢えて勝負した」とのちに語った。
勝負に行った牛島は変化球を投じた。
打者・梨田はコンニャク打法でそれを見事にセンター前にはじき返す。
2塁ランナー・鈴木、ホームに突っ込む。
セーフ!!
喜び弾ける近鉄ベンチとスタンド。
抱き合うのはホームインした鈴木と、安達、中西コーチ。
近鉄ベンチ入りの選手の大半は涙、スタンドのファンも涙で喜びを表現した。
球場全体が「梨田コール」。
寡黙な梨田が「20年の現役生活で初めて」のガッツポーズで応える。
梨田は、このシーズンで引退することを決めていた。