強敵たち 其の一 ランクは10段階評価です

役名

ボロ

出演作

燃えよドラゴン

得意技

踏み潰し、腕ひしぎ逆十字

強敵ランク

★★★3

ヤン・スエ (楊斯)

のちにボロ・ヤンと改名したキン肉マンは、『燃えよドラゴン』で“ハン”の忠実な僕(しもべ)として登場。隆々たる肉体を誇り、職務遂行を怠った戦闘員4人を2分で料理する姿に、初めて見る者は圧倒されるに違いない。「こりゃあ強え、ブルース・リーはどうやってこいつを倒すんだろう」と、いやがおうにも期待が膨らむ。しかし、その期待も虚しく映画の後半でローパー(ジョン・サクソン)と対戦することになり、意外な程あっさり死んでしまう。しかも最後はボディへのセコイ蹴りで…。私は叫んだ。「あれっ? 弱え(笑)!」
ローパーの強さを際立たせたかったのだろうか。何のためにあんなに目立っていたのか分からないぐらい、実に腰砕けで可哀相な役柄だった。

素顔のヤンは見た目と違い、やさしくて繊細な人らしい。太極拳と日本空手の有段者であり、ボディビルダー。ドラマ「Gメン75」の香港シリーズにも登場するので、日本人にも馴染みが深い。ブルース・リーの息子ブランドン・リー映画『ファイヤー・ドラゴン』、ジャン=クロード・ヴァン・ダムの『ブラッド・スポーツ』、『ダブル・インパクト』、倉田保昭監督&主演の『ファイナル・ファイト/最後の一撃』など海外作品に引っ張りだこ。国際派俳優として、ジャッキー・チェンやジェット・リーよりずっと年季が入っているのだ。

 


役名

長谷?

出演作

ドラゴンへの道

得意技

キック

強敵ランク

★★★★4

ウォン・インシック 黄仁植

ドラゴンへの道』後半で、タンロン(ブルース・リー)を倒すための助っ人として登場する空手家の正体は、韓国合気道とテコンドーの達人、ウォン・インシック(黄仁植)。しかし、直後にもっと強い用心棒・ゴート(チャック・ノリス)がやってきて腕試しを挑むもあえなく返り討ち。早々と噛ませ犬にさせられている。何故か日本人空手家として出演させられ、肝心のブルースとの対決では「おまいは、タ〜ンロンが〜」(お前はタンロンか?)とカタコトの日本語を放って失笑を誘う。日本語なのに日本語の字幕が出るのがおかしい。案の定全然歯が立たずに倒され、「あイタ…おイタ…」と唸り、雑魚たちにトドメをさされてしまうという情けない役。

インシックは、朝鮮のソンチュン出身。16歳の頃には池漢載(チー・ハンサイ)の元で黒帯を取得。ブルースが作ろうとしていた『死亡的遊戯』では1階か2階の敵役として彼の名前があり、野外でのデモンストレーションが撮影された(その様子は『ブルース・リー神話』で見ることができる)。設定上でも池漢載の弟子で、キックのエキスパートとして抜擢されたようだ。しかし、ブルースの死去により惜しくも本番は撮影されなかった。のちに、アンジェラ・マオ主演作や、『ヤング・マスター』『ドラゴン・ロード』といったジャッキー・チェン映画にも主に悪役で出演。その見事な蹴り技を披露している。1982年に香港を離れ、韓国映画に数本出演した後はカナダで隠居しているという。
http://www10.big.or.jp/~taryan/whang/(黄仁植愛好会)

SPACE−HIGH

インシックの「おまいはタンロンか〜」は、今でもファンの間では語り草になってるようですね。トニー・リュウやユニコーン・チャンを圧倒できても、ブルースが相手では、全く歯が立たず、「あいった、おいった」などとわめいてましたね。ブルースとノリスのやられ役でしかなかったインシックでしたが、「ヤングマスター」では、兵士を数人なぎ倒したり、ジャッキーがかなり苦戦したりと圧倒的な強さを見せ付けてくれました。09.2.15

 


役名

出演作

燃えよドラゴン、死亡遊戯

得意技

強敵ランク

★★★★★5

サモ・ハン・キンポー (洪金寶)

燃えよドラゴン』冒頭の武術試合。ブルースの対戦相手をつとめるのが、当時22歳のサモ・ハン・キンポー。髪型・表情もまだ初々しく体格も若干細め。オープンフィンガー・グローブを着用し、バク転も披露するなど、体格に似合わぬ軽快な身のこなしを見せる。しかし、映画の上ではブルースに汗をかかせることも出来ずにクルックフィクスという関節技でタップを喫する。出番はこれだけだが、事実上ブルースが最後に撮影したアクションシーンであり、その相手役をつとめたのは非常に名誉なことだろう。

『死亡的遊戯』にも出演が予定されていたが、スケジュールの都合でポシャった。ブルースの死後は78年版の『死亡遊戯』、『燃えよデブゴン』などに出演。その遺志を継ぐ正統な後輩として映画スター兼監督の道を歩み始める。ジャッキー・チェン、ユン・ピョウとともに日本でも絶大な人気を得た。香港返還を前にアメリカへ家族と共に移住し、現在はハリウッド、香港映画両方の制作を手がけている。それにしても、ブルースと喧嘩で引き分けたことがあるというのは本当だろうか。まあ、サモハンの場合は喧嘩も強そうなので、十分にあり得る話かもしれない。
http://www.sammohung.com/ (公式ページ)

 


役名

鈴木の用心棒

出演作

ドラゴン・怒りの鉄拳

得意技

一本背負い、正拳突き

強敵ランク

★★★★★5

勝村 淳

怒りの鉄拳」で、悪の親玉・スズキ(橋本力)を守るボディガードを演じるのは、故・勝新太郎の愛弟子であり、勝のスタンドインをつとめていた勝村淳。当時、勝を尊敬していたブルース・リーは、東京六本木の勝プロ事務所へなんと自ら訪ねてきた。そこで、勝氏に半ば強引に出演させられたのが勝村氏と橋本氏の2人だったという。

さて、映画本編ではこの用心棒とブルースの対決の機会は終盤に訪れる。普通に見ると、わずか数分でやられてしまうこの用心棒だが、突進して放つ正拳突きはなかなか迫力があり、苦悶の表情で倒れるシーンはなかなかインパクトがある。ただやられるだけでなく、ちゃんとブルースに一本背負いも見舞う。これは芝居でなく本気でやったらしい。おかげでブルースは背中を痛め、撮影が数日中断した。何せ勝村氏は柔道家であり、元プロレスラーである。コンクリートに砂利を敷いただけの床に、しかも撮り直した関係で2度も投げられたのだから、いくらブルースといえども怪我をするだろう…。当時の撮影がいかに危険だったかがわかるエピソードだ。また、劇中のいくつかの殺陣は勝村氏がつけたという。

映画のエンディング・スタッフロールでは本名のARIMURAと紹介されている。現在も悪役俳優として活躍しているそうだが、普段あまり見かけない。ブルース・リーと共演した貴重な日本人なのだから、もっと話題になっても良さそうなものだが。

みなこ

勝村淳様は、ブルース・リーの映画の看板を店の入り口に立て、カラオケうたまくらを大阪市東淀川区淡路4−32−10で営んでおります。 大変、落ち着き、心がリフレッシュ出来る良いお店です。07.11.20

 


役名

オハラ、カール・ミラーほか

出演作

ドラゴンへの道、燃えよドラゴン、死亡遊戯

得意技

板の試し割り

強敵ランク

★★★★★5

ロバート・ボブ・ウォール

1964年に行なわれた、ロングビーチの世界空手道選手権大会でブルース・リーと出会い、弟子入りしたアメリカ人。その教えを受けたおかげもあったのか、その後の全米プロカラテ選手権(1970)で王者に輝いているほどの達人である。

そして1972年、香港へ呼ばれた彼は、『ドラゴンへの道』で俳優デビューを果たす。ゴート(チャック・ノリス)の弟子として、中途半端な強さの空手家として出演。「You Tan ron?」と、タンロン(ブルース・リー)にサシの勝負を挑むも、コテンパンにやられてしまう。翌年のハリウッド映画『燃えよドラゴン』にも、鉄の爪ハンの用心棒・オハラとして出演。VTRでは偉く強そうだったが、いざリーとの対決になると全く歯が立たない。おまけに、サイドキックで吹っ飛ばされるシーンでは本気で蹴られ、殺されかかった。さらに、背後で支えたエキストラは腕の骨を折ったというエピソードもあるから、ブルースのキックがいかにすさまじい威力だったかが分かる。

このオハラに、フットスタンプでとどめを刺すときのブルースは、全身全霊を使ったような、何ともいえぬ表情を浮かべる。映画史に残る名シーンである。『死亡遊戯』にも出演し、サモハンキンポーや、ブルースのそっくりさんと死闘を演じているが、それ以降は俳優活動はしていないらしい。彼の中では、空手のチャンピオンになったことよりも、ブルース・リーと共演できたことが人生最大の栄誉…なのかもしれない。

 


役名

吉田

出演作

ドラゴン・怒りの鉄拳

得意技

一本背負い、剣道

強敵ランク

★★★★★★6

フォン・イー(馮毅)

怒りの鉄拳」で、鈴木が経営する虹口道場の師範。冒頭で、チェン(ブルース・リー)が道場へ殴りこみをかけたとき、一番偉そうにしているオッサン。弟子たちが一通りやられた後、チェンに立ち向かうがあっさり撃退され、畳に這いつくばる。「なんだ、大したことないじゃん」と思わせるが、中盤チェンのいない精武門に乗り込んで来たときは、掴みかかる奴等を寄せ付けず、無敵の強さを発揮。きっとチェンが強すぎるのだろうな、と思わせてくれる。

クライマックスでは、なりふり構わず素手のチェンに刀で斬りかかる。しかし、最後は刀を蹴り上げられ、落ちてきた刀身に貫かれて昇天。とぼけた表情が印象的な、味のある役どころだった。役の上では「ヨシダ」という日本人だったが、本当は中国の俳優。この人は日本への留学経験があるそうで、橋本力、勝村淳の2人に対して親切に対応。通訳や香港島の案内など、何かと世話をしたらしい。(別の人だという説もあり) 確かに”いい人”そうだ。

 


役名

鈴木、館長

出演作

怒りの鉄拳

得意技

剣術、ボディブロー

強敵ランク

★★★★★★6

橋本力

怒りの鉄拳」に登場する、「大日本帝国・虹口道場」の館長。なんといっても本物の日本人だから、一番日本人らしく見える。しかし、道場主というより経営者といったイメージで、直接手をくだすのは部下の仕事。それにしてもこの道場、起倒流らしいが柔道場なのか空手道場なのかよく分からない…(笑)。クライマックスでチェン(ブルース・リー)に部下を全員やられ、最後の最後になってようやく自分で戦うことになる。しかし、素手では到底かなわぬと見たか、日本刀を抜きはなって攻撃。ここでのヌンチャク対日本刀の対決はなかなかに見物である。しかし、最後は日本刀を手放してしまい、素手の対決に。起倒流の意地?を見せ、ボディに一発食らわせたものの、直後に反撃のすさまじい飛び蹴りを食らって庭へ吹っ飛び、死亡する。

橋本力、大変強そうでプロレスラーのような名前だが、その風貌通り昔のヤクザ映画に数多く出演している。そして出世映画「大魔人」で魔人のかぶりものをし、目だけを出して奮闘した逸話は有名。「怒りの鉄拳」制作にあたり、所属事務所の勝プロへ出演依頼があり、訳のわからないうちに香港行きが決まったのは、上の勝村氏と同様である。香港での撮影中、現場で出される食事の鍋が大変に不衛生で手を出せず、勝村氏と外のレストランへ食べに行っていたらしい。

 


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