リングスとは?

正式名称Fighting Network RINGS。前田日明が設立、運営していた格闘技団体である。活動期間は1991年4月〜2002年2月で、おおむね1〜2ヶ月に一度のペースで興行を開催。興行は日本各地の会場から1ヶ所が選ばれ、毎回平均して5千人前後(大会場では1〜2万人)の観客を動員した。試合の模様はその週の日曜、衛星放送のWOWOWでほぼノーカット放映されていた。

1991年、プロレス団体・新生UWFの解散後、前田日明はWOWOWの支援を得てリングスを設立した。旗揚げ当初はオランダ、アメリカの選手が数名に日本人選手は前田1人という状況だったが、リングス・ロシア(当時はソビエト)のヴォルク・ハンや正道会館の佐竹雅昭らの参戦により、一躍活況を呈した。リングス・ネットワークはオランダ、ロシアを皮切りに最大で10カ国にのぼり、多くの選手が所属・参戦する。日本人選手も長井満也山本宜久成瀬昌由田村潔司金原弘光などが加わり、一時は磐石の陣容を誇った。

さらにランキング制、審議委員やメディカルアドバイザーの設置など、従来のプロレス団体では見られなかった要素も導入。また、ロシア、オランダ、グルジアでもリングスの自主興行が行なわれ、世界各地で選手を育成してひとつの場所で戦わせるという、前田が当初抱いていたネットワーク構想が実現した。「世界最強の男はリングスが決める」というキャッチスローガンが現実のものになろうとしていたのである。

だが、90年代後半(平成10年以降)になると、格闘技界は実戦さながらのヴァーリトゥード系のルールが主流となる。観客もより過激な試合を望み、リングスルールは次第に飽きられていく。加えて1999年に前田日明が現役引退したことにより、集客力のダウンは否めなくなっていた。その後、KOKルールによるオープントーナメントの開催で注目を集めるも、その舞台で活躍したのはリングス生え抜き選手よりネットワーク外の選手ばかりであった。そして、PRIDEやUFC、K-1など資金力やスケールで勝る大興行の台頭、それらによる有力選手の引き抜きなどもあって、リングスは興行面で苦戦を強いられる。そうした流れから2001年をもってWOWOWが提携を解消。リングスは活動停止を余儀なくされたのだった。我々リングスファンは、ショックを受けつつも現実を受け入れざるを得なかった。

日本では活動を停止したリングスだが、ロシア、オランダ、リトアニアなどではリングスの名を冠した活動や大会が継続し、その形は各地で受け継がれている。日本では小規模ながら、元リングスのスタッフが中心となり、軽量級の選手による戦いの場・ZSTが運営されている。そして、現在PRIDEで活躍しているエメリヤーエンコ・ヒョードル、アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ、ヒカルド・アローナ、ランディ・クートゥアー、ダン・ヘンダーソンなどの大物外国人の日本上陸はリングスマットが最初である。日本ではまだ無名であった海外の強豪を招聘し、活躍の道を切り開いたという意味でも、リングスが格闘技界に与えた功績は計り知れない。

現在の見解では、リングスの試合の何割かは、あらかじめ勝敗が決まっていたとされている。確かに、「これは…」という試合もチラホラ見られたのは事実(とくに前田対外国人選手の試合、オランダ勢同士の試合、トニー・ホームなど一部の外国人の試合などがそれにあたる)。また、ハンや田村は「試合に勝つことよりも観客を楽しませることに重点を置いていた」とも話している。ただ、旗揚げ第2戦目で負けられないはずの前田がTKO負けしたり、田村vs山本の最初の激突、予期せぬ反則攻撃など、明らかに偶発的な試合、真剣勝負だったと思われる試合もちょくちょく見受けられる。ファンだった人ならば分かると思うが、リングスの試合はそうした微妙な空気の違いを感じとるのが楽しくもあった。正直私は進化したプロレスだとも思っていたし、今更だまされていたなどとは思わない。ヤオガチ論争など今更したところで仕様が無い。あまり野暮なことを考えず、ビデオやDVDを見返してみるのも良いのではなかろうか。



リングスルールについて

現在主流の格闘技とは異なり、基本的には素手で戦う。ただし拳による顔面パンチ、グラウンドでの打撃は禁止(スタンドでの顔面への掌底はOK)。試合時間は20分1本勝負(初期は30分)とし、関節技などによるギブアップ、10カウントによるノックアウト、4ダウン(初期は5ダウン)によるTKOによって決着が付けられた。プロレスと同様にロープエスケープが認められているが、ロープエスケープも1回で1ダウン(初期は3回ないし2回で1ダウン)とみなされた。時間切れの場合は、ロストポイント(エスケープ、ダウン回数)の少ない方が勝ちとされた。このほか、打撃系の選手、初参戦選手用にボクシング同様のラウンド制(5分2ラウンドほか)も用意されていた。

99年からは、バーリトゥード(何でもあり。現行のPRIDEルールに近い)からバイオレンス要素を省いたKOKルールの試合が実施された。オープンフィンガー・グローブの着用を任意で決められ、着用の場合は顔面パンチが有効に。ただし、グローブ着用の場合でもグラウンド状態での頭部への打撃は禁止。試合は2ラウンド(1R10分・2R5分)、インターバル1分で行なわれた。ロープエスケープは認められず、また、打撃を受けてダウンした場合はその時点でKO負けが宣告された。

…今見ると、旧リングスルールは確かに物足りない部分もあるが、ポイント制であったということで選手には多少のミスが許されるため、アグレッシブな攻防、白熱したダウン合戦、エスケープポイントの奪い合いを見ることができたのは確かである(逆にそれが仇となって試合がダラダラと長引いてしまう弊害もあった)。


<リングスルール詳細>

リングスルールは度々改正されたが、ここでは最後に採用されていたものを抜粋する。

試合形式・試合時間

20分一本勝負(選手権試合のみ30分1本勝負) 延長はなし

時間切れの場合

ロストポイントの少ない方を判定勝ちとする。ロストポイントに差が無い場合は、審議委員全員の審議により勝敗もしくは引き分けの判定を下す

勝敗

ノックアウト(10カウントKO)、ギブアップ(声に出すか、相手の体またはマットを2回以上叩く )、テクニカルノックアウト(TKO)、ファール(反則)、判定により勝敗を決定する。レフェリーストップ、ドクターストップ、タオル投入、ロストポイントによる試合終了はTKOに含まれる。

ポイント制

4ダウンをした時点でTKO負けとなる(30分の場合は5ダウン)。

1ロープエスケープは1ダウン分のロストポイントとする。対象ロープは全てのロープとする。注意(イエローカード)は1エスケープ分、警告(レッドカード)は1ダウン分のロストポイントとする。

反則技と有効技

・顔面への拳打ちは禁止。掌底による打撃は有効。
・金的を除く首から下への拳打ちは有効。
・ノド仏へのつかみ、あらゆる打撃は禁止。
・立技におけるヒジ、ヒザによる打撃はパット着用の場合のみ有効。
・寝技における肘打ちは禁止。
・頭突きは首から下への攻撃のみ有効。
・爪先蹴りを除くあらゆる蹴り技が有効。
・ダウンした相手への打撃は禁止。
・相手が両手・両ヒザのいずれかでもマットについている場合の打撃は禁止。
・指関節及びヒールホールドを除くあらゆる関節技が有効。
・指を掴む場合、2本以下の指をとることは禁止、3本以上は有効。
・あらゆる絞め技が有効。
・あらゆる投げ技が有効。
・試合中に、故意またはアクシデントを問わず、ロープ外へ出た相手に対しての攻撃は禁止。
・ロー・ブロー(金的への攻撃)、サミング、指による突き、噛みつき、髪や耳を引っ張ること、肌をつねること、ひっかくこと、相手のユニフォームや競技用具を掴むことなど、道徳上許されない行為はすべて禁止とする。

試合時の服装

・ニーパット、シンガード(レガース)は、審議委員会が認めた仕様のものを着用する。
・競技者はスパッツ、ムエタイパンツ、空手技等審議委員会が認定した物を、個々の選択により着用する。
・靴の着用は個々の選択による。ただし着用できるのは堅い素材の使われていない、レスリング用シューズおよびサンボシューズなどの審議委員会が認めたものとする。
・ワセリン、オイルの類いは、眉尻への使用程度の必要最小限度の使用以外は認めない。レフェリーは、試合前に必要以上のオイル使用が無いかを必ずチェックし、不適切な場合は、審議委員に通達し、選手及びセコンドにその除去を指示する。指示に従わない場合は、警告(レッドカード)が与えられる。

競技用具

・ボクシンググローブを着用しての試合以外は、バンテージを巻いてはならない。
・リングスルールの試合において、ボクシンググローブを着用するものは、10オンスのボクシンググローブを着用する。
・ボクシンググローブを着用する競技者のバンテージは、長さが270cmまでとする。また拳の前面をバンテージにより固めることは禁止とし、バンテージを巻く場合はレフリーの立ち会いの下に行うものとする。

グランド状態での打撃

・両競技者が共にグランド状態にある場合、また片方の競技者がグランド状態にあり、もう一方の競技者が両ひざをともにマットについている場合に限り、鎖骨から下へのパンチ攻撃が認められる。
・キック攻撃、ヒジ・膝による攻撃、脊椎への攻撃は認められない。

反則(ファール)に対する処置ならびに注意と警告

・競技者が反則行為を行った場合、レフリーは自己の判断により、「指導」「イエローカードによる注意」「レッドカードによる警告」「反則負け」を宣告することが出来る。イエローカードによる注意はロープエスケープ1回分、レッドカードによる警告はダウン1回分のロストポイントとして加算される。
・競技者が目に余る反則行為を行ったり、競技者が危険な状態にあると感じたら、レフリーは自己の判断により試合を中断させ、審議委員をリング上に招いた審議を計ることが出来る。
・レフリーは、競技者が行った反則行為が明らかに故意と認められる場合は、「警告」を与える。
・レフリーは、競技者が反則技のフェイントを何度も行った場合には、「指導」もしくは「注意」を与える。
・各審議委員は、競技者の反則行為に対して目に余る反則や競技者が危険な状態にあると判断した場合には、赤い目印をリング上に投入し試合を中断させることが出来る。
・サブレフリーはリングサイドに位置し、常に競技者に注意を促し、必要に応じて審議委員に試合の中断・中止を要請することが出来る。
・公式記録員は、審議委員より試合の中断または試合の中止の指示が出た場合、直ちにゴングを鳴らし、試合を中断または中止することができる。
・試合中は、レフェリー、サブレフェリー、審議委員の各人が、ルールが遵守されているかを監視し、著しくルールから逸脱した行為、あるいは故意によるルール違反があった場合は、ただちに試合を中断または中止し、ルールに従って公正に試合がおこなわれる状態に復帰するまで、再開を認めない権利を有する。
・また、著しくルールから逸脱した行為、あるいは故意によるルール違反が度重なった場合、その選手に対して、罰金や試合権利の剥奪等の罰則が与えられるものとする。
・試合中、選手及び選手のセコンドは、試合進行の妨げになる行為を行ってはならない。また、アクシデント等による試合中断時は自コーナーで待機し、その際はいつでも試合を再開できるような状態でいなくてはならない。水分の補給やセコンドがリングに上がってアドバイスをする等の行為は認められない。負傷による場合も必要以上のセコンド、関係者がリングに上がることは認められない。
・セコンドが試合中エプロンに上がる等、試合の進行を妨げる行為をおかした場合、レフリーが注意または警告を与える。セコンドが与えられた注意、警告は競技者のロストポイントとして加算される。
・ロープ際で故意に場外へ逃げる、グランド状態で全く攻防が見られない膠着状態が長く続くなどの明らかな消極的態度には、レフェリーが注意(イエローカード)を行い、ロープエスケープ1回分のロストポイントを与える。
・消極的態度があまりにも著しい場合、注意を与えられても改めない場合等には、レフェリーは警告(レッドカード)を与え、ペナルティとしてダウン1回分のロストポイントを与える。

試合を止める場合について

・A選手による正当な攻撃によってB選手が負傷(関節等の負傷)をした場合でも試合は継続させるが、負傷により試合続行が不可能ならばレフェリーストップとなり、B選手の負けとなる。
・A選手による正当な攻撃によってB選手が負傷(カットによる流血等)をした場合、レフェリーは試合を一時中断しドクターの診断をあおぎ、試合続行不可能の場合はポイントの差にかかわらずB選手の負けとなる。
・A選手がB選手に対して故意に反則攻撃をし、B選手が負傷(関節等の負傷・カットによる流血・骨折・脱臼等)をした場合、レフェリーは試合を一時中断しドクターの診断をあおぎ、試合続行が可能の場合はA選手のポイントを減点する。続行が不可能の場合には反則負けとする。
・アクシデントにより負傷(関節等の負傷・カットによる流血・骨折・脱臼等)した場合、レフェリーは試合を一時中断しドクターの診断をあおぎ、試合の続行が不可能な場合にはその時点でのポイントの優劣により勝敗を決定する。ポイントの差がない場合には引き分けとする。

 

衝撃! リングスが突然の活動休止宣言(2001/12/27の記事)

 12月27日都内でリングス前田日明代表が会見を行い、2月15日の横浜文化体育館大会を最後に活動を休止することを発表した。会見の席についた前田代表は淡々とした口調でリングスの組織の精算、活動の休止を発表。わずか2分で会見を切り上げ、記者の質問を一切受け付けず席を立った。広報によると「今日はこれ以上のことは話したくないというのが前田の希望。今やっている形は終了ということ。とにかく全所属選手で2月の大会を全力で行う」とのこと。所属選手の今後の動向、活動休止の具体的な原因については後日あらためて前田代表から発表される。

■前田代表の話

 年末のお忙しい中お集まりいただいてありがとうございました。リングスは来年2月15日の大会を持ちまして、組織の精算、活動の休止ということになりました。この10年間応援してくださいました各マスコミ、ならびにWOWOW、特に初代の局長である桑田さん、桑田さんとは世界照準を目指そうということで頑張ってきましたが、力足りずにこうなってしまった責任はひとえに自分にあると思います。

 各国にあるネットワークは日本から資金やノウハウの導入を得まして、独自の興行形態を引いていますので、ネットワークは残っていくことになります。日本で立ち上がったリングスが各国に根付いていくものと信じています。現時点では何も決まっていない状態ですが、早々に今後の方針などについて、かねてからこういうことも予想していましたので、考えていたプランに基づき動いていきたいと思います。以上です。ありがとうございました。



懐かしのリングス公式ホームページ

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参考/フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』のリングス項目
参考/よろず屋 ☆★あべにいのぺえじ★☆